愛されることの奇跡、愛することの軌跡
『お待たせ。間に合わなくて本当に3重奏になるかと思ったよ。研修が早く終わって助かった』


「何がお待たせだよ。演奏に参加するならするって先に言ってくれても良かったのに…って、健吾…先生は、何を演奏するの?先生のマイ楽器はこれじゃん」


私の手元にあるアルトサックスを指し示した。


『俺は、こっち』


手にしていたのは、ソプラノサックス。


『こっちも、マイ楽器。金澤を驚かせようと思って上杉と山田とでドッキリ仕掛けたの。でも、いきなり驚かすのは演奏に影響が出るから、今のタイミングでバラシたんだ。でも、人前での演奏久しぶりだからちょっと緊張』


『よろしくお願いします』


陽平はペコリと頭を下げた。


このふたりにしてやられたけど、健吾と一緒に演奏できるのが、何より嬉しいと思ったから、まあいいか。


そこから1時間、練習した。


『さ、時間だ』


『了解、楽しもう、玲奈』


「うん」


再びレセプションルームに戻ると、舞台は既に整えられていた。
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