愛されることの奇跡、愛することの軌跡
*姉弟~side KENGO~
《side KENGO》


謝恩会翌日の日曜日。


俺の部屋で夜を明かした玲奈が"午後から美郷とショッピングする約束をしてるから"と、遅い朝食を外のレストランで取った後、彼女を木内との待ち合わせ場所で下ろした。


俺はその足で、実家に向かった。


目的は、実穂に会うこと。


実穂の見舞いもそうだけど、ゆっくり話をしたいと思ったから。


文字通りの"箱入り娘"な実穂は、生まれてこの方、ずっと実家で暮らす。


高校まではナルガクで、大学はアール女学院大だった。


俺達4きょうだいのうち、ただひとり、同じ母から生まれてきた姉。


でも俺は実穂のことを"お姉ちゃん"とか"姉貴"とか呼んだことがないし、姉だとも心からは思っていない。


ここで一緒に過ごした頃は、ワガママ度合いは最悪だった。


お手伝いさんのことが気に食わないと平気で突き飛ばすし、ごはん時、機嫌が悪いと食器ごとひっくり返して後で掃除するのが大変で。


父さんも実穂に甘かったから、欲しいものがあると湯水の如くお金を出して買い与えて…


俺達男兄弟たちはそんな実穂と関わることが面倒で、なるべく避けていたんだ。
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