紅 き 瞳





「おい……行き先を城から、その横の塔に変更しろ……。これでいいか…リョウ」




久しぶりに見たナオの本物の笑顔。


口調も、呼び方も……何もかも昔と同じだ。



今の直は、俺を「ナイト」としてではなく、「リョウ」…としてみてくれているんだ。



「あぁ……ありがとうナオ」


「いや……悪かったな、リョウ。俺にもいろいろあったんだ」



久しぶりの穏やかな時間。



いつもいつも警戒心を出しまくって生きていくのは…きつかった。



心を許せるナオまでも、親父のいいなりになってしまったから。



だけど、この馬車の中には俺とナオ以外の者はいない。


だから……。



「なぁ、リョウ……、いやナイト。お前がいない間に魔界に何があったのか…知っておいた方がいい」



「何かって…何が?」




何かあるんだとは薄々気付いてはいた。



だが、今回俺が魔界に呼び寄せられた事とそれが関係あったなど…。



「何が…何があったんだ」



「国が…、滅びかかっているんだ。悪魔たちの手によって…」


「あ、くま?」


悪魔を信じていなかった…というのは嘘ではない。




俺たちバンパイアがいるのに、悪魔はいない…というのは可笑しな話かもしれないが、この世界に悪魔と言う存在はなかった。




悪魔は、俺たちとは違う次元に住む生き物とされてきたのだ。





< 82 / 98 >

この作品をシェア

pagetop