紅 き 瞳
「おい……行き先を城から、その横の塔に変更しろ……。これでいいか…リョウ」
久しぶりに見たナオの本物の笑顔。
口調も、呼び方も……何もかも昔と同じだ。
今の直は、俺を「ナイト」としてではなく、「リョウ」…としてみてくれているんだ。
「あぁ……ありがとうナオ」
「いや……悪かったな、リョウ。俺にもいろいろあったんだ」
久しぶりの穏やかな時間。
いつもいつも警戒心を出しまくって生きていくのは…きつかった。
心を許せるナオまでも、親父のいいなりになってしまったから。
だけど、この馬車の中には俺とナオ以外の者はいない。
だから……。
「なぁ、リョウ……、いやナイト。お前がいない間に魔界に何があったのか…知っておいた方がいい」
「何かって…何が?」
何かあるんだとは薄々気付いてはいた。
だが、今回俺が魔界に呼び寄せられた事とそれが関係あったなど…。
「何が…何があったんだ」
「国が…、滅びかかっているんだ。悪魔たちの手によって…」
「あ、くま?」
悪魔を信じていなかった…というのは嘘ではない。
俺たちバンパイアがいるのに、悪魔はいない…というのは可笑しな話かもしれないが、この世界に悪魔と言う存在はなかった。
悪魔は、俺たちとは違う次元に住む生き物とされてきたのだ。