夜の虹
マンションを出た所の路地でリナちゃんと別れ、私はパッションといいう古びたラブホテルへ向かった。

自分のケータイで店に電話をかけ、ホテルに着いたことを告げると、スタッフが部屋は204号室だと伝えてきた。

電話を切り、ホテルのフロントに居座る中年の女性に、

「204に」

とだけ告げ、足早にエレベーターに乗った。

エレベーターの中で手鏡越しに髪を撫で付け、リップクリームを塗ると、100円均一に売っているキッチンタイマーを35分に設定し、部屋の呼び鈴を鳴らすとともにスタートを押した。

「こんにちは~(*´∀`)お待たせしましたぁ」

ふんわり、やんわり、温かい息を両手にかけるように喋る。

「あ~ぁ、可愛いぃ」

そう言って私を部屋に招き入れたのは、30そこそこのスーツを着たサラリーマンであった。
至ってフツーのビジネスマン。

営業かな?

靴を揃え、カバンをソファーに置く。
ハンガーを取り出すと、彼に向かって手を差し出す。

「あぁ、ありがとう」

私のジェスチャーを理解して、上着を脱ぎ出した。
スーツのジャケットは背中が湿っていて、今さっきホテルに着いたことを伺わせる。

部屋は冷房が効いていて、真夏のオフィス街のオアシスだ。

「ちょっと涼みに来たんだよ。もう、あっつくて・・・」

ベッドの縁に座り、汗ばんだシャツを肌から離そうと躍起になる姿を見て、私は彼のYシャツを脱がしにかかる。

「シャワー浴びよ?」

はにかみながら、全身の服を脱がすと先に浴室へ行ってと促し、自分もいそいそと脱衣して、殺菌剤入りのボディソープやイソジンに髪留めを持って狭い浴室へ入る。



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