恋の授業。



「たまたまお会いしたので少し話していただけですよ。」



ホクロメガネはそう言うと、爽やかさを崩すことなく会釈をして帰ってしまった。



うわー…残された…



ホクロメガネは上手いこと言ってくれたと思うし、これが最善だったとも思う。
でも、森川君の機嫌は戻らない気がする。



「ほんと、ごめんね。連絡くれたのに。」



もう1度謝ると



「ほんとに、ただの近所の人?」



と、間髪入れずに聞かれた。



「そうだよ。嫌な気分にさせちゃったなら、ごめん。」



『ただの近所の人』では無いかもしれない。連絡を取り合っているんだから。

でも、ただの近所の人、でもある。


不安にさせる必要のない事を、不安にさせてしまうなら、ただの近所の人でいいと思った。


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