恋の授業。


風呂から出ると、ソファに座って物音一つ立てずに何かを読んでいる。



「あっ!!ねぇホクロメガネさんっ!」



突然の大声とともにニヤニヤと悪い顔で近寄ってくる彼女は、こんな表情も見せるようになった。

でもそれは…
俺の弱みをにぎったときだ。


あっ、と思った時には遅かった。


彼女が手にしているそれは、去年の冬に書店で見つけて買ったものだ。
彼女が大きく載っていたから、恥ずかし気も無く買ってしまった。


まいったな…


ストーカーのような自分に嫌気が差して本棚の奥にしまっていたのに、ここ最近の空不足で耐えきれずに引っ張り出して、そのままだった…



「ワタシの名前、これでわかったんでしょっ!?」



その得意気な笑顔が直視できない。

左下に小さくある“川原空”という文字…

その通りだった。



「なーに下向いてんの???
この本どうしたの?
ホクロメガネさんが買ったの?
なんで載ってるって知ってたの?」



この悪い顔で俺を困らせるためだけの質問を次から次へと出してくる。


俺だって、やられっぱなしではいられない。



「コホンッ。
そう言えば、空が前に言っていた“撮影中にイルミネーション並木で僕を見た”って、この時ですか?」



ッハハ。
一瞬で形勢逆転だ。
あんなに得意気に悪い顔をしていたっていうのに、頬を真っ赤にして俯き始めた。


この写真、切ないだけじゃなくて明らかに『あっ』て顔してんだよなー。



「この目線の先には、誰かいたりして?」


仕返しだ。


「………」


おっと…黙り込んでしまった。
“森川君を想って”なんて言えないよな。

…やり過ぎたか…?



「ホクロメガネさんだょ…わかってるくせに。気付いてくれなかったくせにっ。」


………っ!?

まさか、本当に…?


この空が見ている先には…
本当に俺がいるのか?


もう……勘弁してくれよ
…可愛すぎるだろ…



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