恋の授業。
 


「信じられませんか?」



ホクロメガネもまた、ニヤッとして言葉を返す。
ワタシは間髪入れずにもちろん!と返事をしたあとにこう付け足した。



「その口調があまりにも紳士過ぎて、余計に胡散臭い!」



ホクロメガネは笑っていた。



夜風が新緑を揺らして、心地いい音が響く。



「はぁ~気持ちいいなぁ~」



そこにホクロメガネがいることも気にならないほど、この状態に慣れたみたいだ。


しばらく経つと、ホクロメガネがさっきまでと違う態度で冷静に話し始めた。



「思ったことを思ったままに言葉にしたり、それを誰かに聞いてもらう事って、すごく幸せなことなんですよ。」



「…………」



……そうなの?
そうなのかなぁ…



「納得していませんね?」



そこまで言って穏やかに笑うと、話を続けることはなかった。



ワタシは、頭の中が空っぽなこの状態が心地よかったし、何も考えたくなかった。



空気は夜の匂いが増してきていた。


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