恋の授業。


駅に着くと、遠くからでもわかるほど長身の高校生が壁にもたれて立っている。



「うぅっ…」



森川君を目の前にして、逃げ出したくなるような気分だ。



…だって、付き合ってるわけでもないのに一緒に学校行くなんて…なんか目立つし。
噂とかだって立ちそうだし……



逃げ出したい自分の気持ちが森川君への罪悪感になって自分で言い訳をする。
自分は冷めた人間だと思うことが多い分、今日は何故か断れなくて、どうもオカシイ。



「あっ」



森川君がワタシに気づいた。



「えっ」



森川君が満面の笑みで手を振っている…



「わぁぁぁあ…!」



森川君がそのままの笑顔で走ってくる……



「おはよっ!急に誘ったりしてごめんね!」



ニコニコと走ってくる森川君には、ピンッと立った耳と、ブンブン揺れるシッポが見えたような気にさえなる。



…い、犬だ…



「…?…川原さん??」



「うっ!ごっ、ごめん!お、おはよう?かな?」


あるはずのない耳とシッポの幻覚を見ていたワタシは、心ここに在らず、だ。



「アッハハハ!また疑問系?おかしいのっ!」



ワタシより女子みたいな言い方…
ファンはこんな所がたまらないのかな


森川君は笑顔のままホームに進んで行く。


いつもと同じ時間、同じ電車。
違うのは車両と、隣にいる森川君だ。

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