恋の授業。



…やっぱりなんか、落ち着かないよー。



そう思って、隣にいる森川君を見上げると、バッチリ目が合ってしまった。



…ん?



「川原さん…やっぱり、嫌だった…?」



笑っていたはずの森川君が、なんだかとっても不安げな顔をしている。
ピンピンだった耳も垂れ下がったような気がして、なんとかしなくちゃという気になる。



多分、ワタシが嫌々だと思ったんだ。
いや、あながち間違ってはいないような…
でも……

…こういうときは、えっとー、どの顔?!
わかんないわかんない!



4種類の顔を使い分けてきたワタシにしては、あり得ないほどパニクっている。



「そっ、そんなことないよ!」



森川君の言葉が、図星だったような、違うような…
ハッキリしない気持ちのまま上手く顔を作れたかな……
どちらにしても、この気持ちは知らせちゃいけないような気がする。



「それ、ホント?誘っといて変だけど、無理はしなくていいからさ!」



自嘲気味に笑いながらそう言う森川君の顔は、とても見ていられない。


この状況が急だったのは確かだし、ワタシがついていけてないのも事実だけど、どうしても嫌なことは断れるはずのワタシがそれを選ばなかったんだ。



自分の気持ちがほんの少し整理できた。
これでもう、大丈夫。



「ホントに、大丈夫だから!」



ワタシの笑顔は、嬉しい、楽しいアピールの『全開笑顔』。


森川君のホッとした顔と再びピンッと立った耳が、ワタシの選択が正しかったことを証明している。

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