恋の授業。



さてと。
今日は雑誌の発売日だから本屋に寄って帰ろう。



実は、今回の雑誌には自分も少しだけ載っている。
ちょっと前にサロンの帰りに声をかけられて、スナップ写真を撮ってもらった。

ほんの少しだけど、でも自分がどんな感じで載っているのかは気になる。


コミックとかラノベも結構読むから
駅の近くにある本屋は行きつけだ。





目当ての雑誌はすぐに見つかって、次はラノベで良いのがないか探していると、
突然隣に黒っぽい人の気配がした。

何の気なしに見てしまったのが失敗だったと思う…


さっきの男の人だった。



「あ…。偶然、ですよ。付けたわけではありません。」



そう言って薄く笑った。
ワタシの心を読んでいるようなリアクションだ。



そんなに顔に出していないつもりだったのに。



また会うなんて…最悪。



「さっきは驚かせてすみませんでした。
つい、起こさなければ、と思ってしまったのですが、強引過ぎました。」



やっぱりこの人、どっかで見たことあるようなー。
うーん……



目だけを上に向けて、警戒しながらもジッと見る。



「今日は、グロス付けていないんですか?」



グロス…?
グロスが何?何でそんな事…




「あのオレンジ、お似合いでしたよ。」

オレンジのグロス……?

目の前の人を真っ直ぐ見つめていた目は
泳ぐように左右へ往復していた。


「あっ!」

あっ、あっ、この前の!
グロスの男か!
だから見たことあったんだー!



既に口角を上げてニヤッとしている男は

「やっと思い出して頂けましたか?」

と、意地悪な顔で言った。

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