恋の授業。
雨のち


いつもと同じ電車の同じ車両に大体同じ顔ぶれで乗り込み、パーソナルスペースを完全に失った状態でこの時間をやり過ごす。


顔を上げてみても、見えるのは他人のスーツばかり。


陰のあるような雰囲気が心地良いGgが、唯一の慰めになってくれる。



梅雨真っ只中で、電車の中は足元も、制服も鞄も、全てが水分を含んでしまうけど、イヤだと思ったところで何も変わらないことくらいわかってる。



同じように、人間関係だって、思っているだけで変わるわけはないけど、変わらなければ悩むこともない。



結局森川君とだって、話すようにならなければ、関わりのない今が普通だったんだから…。



ワタシはこの生き方から抜け出せないんだろうな…。



ふと、ホクロメガネのことを思い出した。

もうずっと、電車では会ってないし、梅雨に入ってからはベンチにも行っていない。



思いのままに生きる、ということをさり気なく勧めたホクロメガネは、今のワタシを見てどう思うんだろう。



べつに、何も思わないか…



ホクロメガネのことも、森川君とのことも、なんだか全てが遠い昔のことのような、もしかしたら錯覚だったのかもしれないとさえ思えてくる。


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