恋の授業。



綾子とマリがマシンガントークをしながらワタシの前を歩いている。



一体どこで息継ぎをしてるんだろうと思うほどの勢いで話す2人を通りすがりの大人たちがチラチラ見ているけど、全く気が付かない2人に、ついニヤニヤしてしまう。


今日は、珍しく3人の予定が合って、綾子とはよく行っているカフェに行くことになった。



どんなに楽しい時間でも、気が緩むと、森川君のことを思い出すことがある。

今でもやっぱり、話をすることはないし、ワタシも気にしないようにしている…。



「……っ!………ってばっ!」



遠くで聞こえていたような声がワタシを呼んでいたことに気付いてハッとすると、綾子とマリがそろってこっちを見ていた。



「!!??」



「おーい、くーってばー!何注文するの?」



いつものカフェに着いて、もう既にに注文を決めたマリに急かされていた。



「…あっ…!ご、ごめんっ!えーっとワタシはねー…」



メニューをパラパラとめくりながら、でもその内容は全く頭に入ってこない。



「くー、最近よく意識とばすよね~。」



マリの細めた何かを疑う目が何となくいたたまれなくて、ついメニューに目をやってしまう…。



ううっ……



「あー、ワタシ、ウィンナーココア!」



そう言って2人に目線を戻すと、2人はじーーっとワタシを見ている。


トドメは、ウィンナーココアを注文するのは決まってるんだから、メニューを見るふりをするなという綾子からの一言だった…



こっ、これはっ……!
今日は逃げられない…。



そう悟ったワタシは、それも悪くないか、と思った。


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