バターリッチ・フィアンセ
「……織絵、酔いすぎ。そろそろ、おいとまする?」
「ん……そう、ですね。明日も早いし」
ぼんやりとした思考のままそう答えると、父が使用人を呼んで、車を準備させたようだった。
「それじゃ、パーティのことは任せておいてくれ。城戸くんには、素晴らしい新作パンを頼むよ」
「わかりました」
普通に会話する父と昴さんの声を聞き、私は酔いの回った頭で、もしかして仲直りしたのかなぁなんて思う。
そういえば、私が真澄くんと話している間、二人は二人だけで何か内緒話をしていたのよね。
それが、あのことについての“和解”だったのなら、私は嬉しいけれど……そんな簡単には、いかないわよね。
いつの間にか乗せられていた我が家の車の後部座席で、私はとうとう本格的な眠気に襲われ、隣の昴さんの肩にもたれながらくっつきそうな瞼を何度も押し上げていた。
そんな私に昴さんが息を洩らして笑ったのが聞こえ、それから子供を寝かしつけるように頭をぽんぽんと撫でられた。
「寝ていいよ。また明日から一週間忙しいから」
その感触と、優しい彼の声と、車の揺れが心地良くて、眠りに落ちる寸前のこと……
「パーティ……か。それまでに、俺はお前のこと――――」
私のこと……?
なあに? 昴さん。
気になったけれど最後までは聞き取ることができず、私は隣に彼のいる安心感の中、深い眠りに誘われていった。