この道を、君と
なんて決心しても、いざ目の前にすると脚はすくむものだ

少し早い春の陽気が漂い始めた二月下旬

薄手のジャケットをクローゼットから取り出し、

春らしいパンプスの音を響かせながら、

桐谷砂都美はとある幼稚園の前に来ていた

足を止めて高い塀からそっと中をのぞくとたくさんの子供たちが走り回っていた

地面をボールが弾み、そのあとを子供たちが追いかける様子に思わず微笑む

その子供の中の一人を砂都美の視線は追いかける

黒のサラサラの髪を方で切りそろえ、丸い瞳の女の子

「澪」

口が動いたのは無意識だ

元気に笑う彼女に、そっと塀から一歩遠ざかる

ああ、本当に自分は何をしているのだろう

あの子は、こんなにも強く生きているというのに

自嘲的な笑みを宿していると

「砂都美?」

ふと名を呼ばれ、反射的に顔を上げる

「柊二」

砂都美を驚いた彼の瞳が捕え、けれどそれはすぐにうれしそうなものに変わる
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