妖精と精霊と人間と
 「明?!北斗、止めてよっ!北斗お!!」
 美香が必死でそう呼ぶと、北斗は真正面を見詰めたまま呟いた。
 「俺・・・ココを知っている。」
 「当たり前ですよ、北斗さん。いいえ、ノース・グリード・スター様。貴方は、もとはココの住人なんですから。」風流はそこまで言って、明の手を自分から離してさらに続けた。「やっと、思い出して下さったようですね。良かった。」
 そう言って、風流はにっこりと微笑んだ。
 「どう言う事だよっ!何で・・・何でこいつがこんな所の人間なんだよッ!」
 明がそう怒鳴ると、風流はこう続けた。
 「明さん、それは違います。ノース様は人間ではない。精霊です。幻の生き物と言われる一角獣、ユニコーン。それが、ノース様の本来の姿なのです。」
 風流がそう言って北斗に微笑みかけると、北斗の周りを真っ白な光りが包み込んだ。数秒後、その場には北斗ではなくユニコーンが居た。一メートルは有ろうかという、先端が赤、中間が黒、付け根が白の長い一本の角。そしてその体は、純白の毛に覆われ、たてがみは朱色をしている。
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