妖精と精霊と人間と

第二話 本の中の世界

 どのくらいの時間がたったのだろうか。気が付くと、皆は森の中に居た。周りの空気が澄んでいる。北斗達がいつも居るゴタゴタした街とは違う、綺麗で穏やかで優しげな場所だ。目を覚ました北斗は、体を起こして上を見上げた。木々の間から、青い空が顔を覗かせた。ふわりと舞った風が、北斗の頬と―――全体は朱色だが―――真ん中だけ黒い髪を、さっと撫でて行った。
 「起きられたのですね、北斗さん。」
 いつの間に気が付いたのか、彼の横に来て風流がにっこりと微笑んだ。
 「気が付いていたんだね。良かった―――ハッ―――美香と明は?!」
 北斗はそう言って、後ろを振り返った。美香と明が、今まさに起きようとしているところだった。
 「ああ、大丈夫だぜ?」
 「そうだよ?北斗。あたし等が簡単に死ぬわけ無いでしょう?」
 そう言って、北斗達三人は笑い合った。しばらくすると、明は口を開いた。
 「で?風流サンッ・・・ここは、どこなんだ?」
 明はそう言って、風流に掴みかかった。いつものポーカーフェイスでどこか女性に甘いような顔は、そこにはなかった。
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