妖精と精霊と人間と

第一話 『バジル・ホルモン』

 「明ー!ちょっと!待ちなさいって言っているでしょ!今日ばっかりは、逃がさないからね!!」
 三年六組の教室から、聖堂時明が東廊下を突っ切って、図書室へと向かって走っていた。その後ろを、紺野美香が追いかけていく。
 「待てっつわれて、待つ奴はいねぇんだよっ!そ・れ・に、俺が何をしたっ!」
 「女の子泣かせて何言ってるの!」
 「だあから、それは誤解だって!」
 そう言いながら、明は図書室のドアを勢い良く開けはなした。無人だと想っていた図書室にいた一人の少女は、先刻まで眺めていた本をバタンと音をたててしめた。そして、明を振り返った。
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