君と歩く未知

　「ごめん…でも、オレは弥生もお腹の赤ちゃんも好きだ。だから…たとえオレの子じゃなくっても…赤ちゃんを産んで欲しいんだ…」
アタシは涙を必死に堪えながらカズくんを睨み続けた。
涙を流しちゃダメだ…
涙を流せば、今の感情に流されてしまうよ。
カズくんの子として赤ちゃんを産んで、赤ちゃんとカズくんの未来をメチャクチャにしてしまうかも知れないよ…
アタシはカズくんにただ首を横に振った。
「じゃあね！明日この子堕したら、報告の電話するね」
アタシはそう言って、歩き始めた。
カズくんはただ立ち尽くしているようだった。
アタシは足早に歩き出した。
お腹に手を当てて、涙を堪えながら…
　タッタッタッタッタ…
アタシの後ろから、誰かが駆けて来る…
アタシの悲しみに沈んだ心は今、そんなことはどうだって良かった。
振り返る気さえせず、とぼとぼと歩き続けていた…
　その時、後ろからふわっと温かいものに包まれた…
それは温かい羽根に触れたようだった…
アタシの胸に詰まっていたいくつもの悲しみが解き放たれた気がした。
「弥生…赤ちゃん、オレの子として産んでよ…」
この温かい羽根はカズくんだったんだ。
アタシの目から一筋の涙が流れた。