君と歩く未知
 「お母さん…」
「大丈夫よ、弥生。怖くないからね…」
次の日、アタシとお母さんは病院の待合室にいた。
アタシはお母さんの手をぎゅっと握った。
その時、誰かが走って病院に入って来た。
静かな院内に響いた声。
「弥生ちゃ…!」
息を切らしながら入って来たのは美和ちゃんだった。
「美和ちゃん!」
アタシはその場に立ち上がって美和ちゃんを呼んだ。
美和ちゃんはホッとしたような笑顔になって、アタシの元まで歩いて来た。
「急いで学校抜け出してきたの…」
アタシも笑顔になって美和ちゃんに言った。
「ごめんね、心配かけて…でもアタシ大丈夫だから。…もうすぐ、手術なんだ」
美和ちゃんは悲しげな顔になって、アタシの手を握った。
「今日は和哉、学校休んでるんだ…メールしても返信なくって…。意地でも連れてくれば良かったね。弥生ちゃん、不安でしょ?」
アタシは首を横に振った。
「ううん。カズくん、きっと落ち込んでるんだよ…、昨日カズくんが言ってくれたの。『オレの子として産んで』って…」
「それくらい、弥生と赤ちゃんのこと大事に思ってたんだね…」
アタシはうつむいて頷いた。
「でもね、こんな風にカズくんの未来決めちゃダメだと思ったの…」
美和ちゃんはアタシの肩を揺すって言った。
「大丈夫。弥生は間違っていないよ…、気にしない方が良いよ」
アタシは笑顔で頷いた。
「小林さーん!こちらへどうぞー」
看護士さんがアタシを呼んだ。
アタシはお母さんと美和ちゃんと一緒に部屋に入った。
「ベッドに寝て待っていてくださいね」
看護士さんに促されてアタシはベッドに寝て、ふわふわの布団に包まった。

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