君と歩く未知
 アタシたち三人の間に静かな空気が流れた。
アタシは静かにお腹に手を当てた。
「お母さん…」
アタシはお母さんの顔を見上げて尋ねた。
「なに?」
お母さんはアタシの手を握った。
「今日の帰り、お父さんが好きだったカステラ買って帰ろ…」
お母さんは笑顔のまま首をかしげた。
「どうして?」
アタシはうつろな目をしたまま言った。
「…お仏壇にお供えするの。それで、アタシの赤ちゃん…天国に連れて行ってくれるようお願いするの…」
お母さんは目に涙を溜めて言った。
「そうだね、そうしようね…。大丈夫、きっとお父さんが赤ちゃんを迎えに来てくれるよ…」
アタシはニッコリ笑った。
美和ちゃんはお母さんの後ろで涙を拭っていた。
 看護士さんがやって来てアタシたちに言った。
「では…ご家族の方は待合室でお待ちくださいね」
そう言われてもお母さんはなかなか手を解こうとしなかった。
だからアタシからお母さんの手を解いた。
「大丈夫だから」
アタシはお母さんにニッコリ笑って言った。
美和ちゃんはアタシに手を振った。
アタシは美和ちゃんにも、ニッコリ笑いかけて手を振った。
 美和ちゃんが扉を開けて外に出ようとしていた時、美和ちゃんは上ずった声を上げた。
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