君と歩く未知
 カズくんはそんな風に目を閉じて手を合わせているアタシをじっと見つめているようだった。
アタシが目を開けるとカズくんは言った。
「見せたいものがあるって言ったじゃん、このことじゃないよ。こっち来て、オレの部屋」
カズくんはそう言ってアタシの手を掴んだ。
そして、家の奥のほうにある部屋にアタシを連れて行った。
…ここが、カズくんの部屋なんだ。
「ちょっと散らかってるんだけど許してな。…弥生に見せたらびっくりするよな…」
カズくんはニコニコしながら言った。
アタシはカズくんのそんな笑顔が嬉しくて仕方なかった。
 カズくんは今日美和ちゃんがアタシにしたみたいに、ドアノブに手をかけて質問をした。
「そーだ。訊いておかなきゃ」
アタシは首をかしげた。
「…まだ…本当にオレのこと好き?」
カズくんは恥ずかしそうにうつむいてアタシに訊いた。
アタシはカズくんの顔を覗き込んでニッコリ笑って言った。
「…好きよ、すっごく大好きだよ。昔も今も…きっと未来もずっとカズくんが好き。一生…変わらないって思うの…」
アタシはそこまで言って、今度はアタシが恥ずかしくなってうつむいた。
「弥生…言い過ぎ…」
カズくんは顔を赤くしてアタシの頭を小突いた。
アタシはそんなカズくんが愛しくて、カズくんの小さな仕草が嬉しくなる。
「じゃあ…弥生、どうぞ…」
そう言ってカズくんは部屋のドアを開けた。
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