君と歩く未知
 「…竜平、塾なんか行ってたか?」
カズくんが呆然とした感じでアタシに聞いた。
「ってゆーか、竜平くんって勉強嫌いじゃなかった?」
アタシもカズくんと同じように言った。
「確かに。あいつには塾の存在自体必要ねぇよ」
そんな会話を交わすアタシたちの間に慌てて美和ちゃんが入って来た。
「…ね、ねぇっ!それより予定立てない?」
「あっ、そうだねっ!花火、すっごく楽しみ!」
アタシがニコニコして言うと美和ちゃんはなぜか言い辛そうな顔をしていた。
美和ちゃんは、直紀くんとチラチラ目を合わせている。
「やっぱ…直紀が言ってよ」
美和ちゃんはいつもより小さな声で直紀くんに言った。
「はぁ!?美和が提案したんだろ?」
それから美和ちゃんは直紀くんの傍に寄って、耳元で何か話し始めた。
アタシとカズくんが顔を見合わせて首をかしげた時だった。
「最初はグー!じゃんけんほいっ!」
美和ちゃんと直紀くんは大声でじゃんけんをした。
「ぎゃーっ!なんでこんな時に限って負けるわけぇ?」
そう言って美和ちゃんは肩を落とした。
そんな美和ちゃんの肩を叩いて直紀くんが言う。
「よっしゃー!じゃあ、あとは頑張れよっ!美和ちゃん!」
「うるさいっ!」
そんな夫婦漫才のようなやり取りを見てアタシは笑った。
美和ちゃんはやっぱり言い辛そうな顔をして、いったん深く息を吸った。
顔をちょっと赤く染めて美和ちゃんは言った。
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