君と歩く未知
　「…花火、お泊りで行かないっ？」
アタシとカズくんは唖然として口をポカーンと開けた。
一瞬の沈黙の後、アタシとカズくんは
「「はぁ！？なんで！？」」
と綺麗にハモった。
美和ちゃんは言い訳をするような小さな子どもみたいな可愛い目をして言った。
「…あ、あのねっ、花火大会の会場の近くにホテルがあってね、そこのホテルの窓から、花火がすっごくよく見えるって噂でさ…」
カズくんは照れたように顔を赤らめて言い放った。
「アホかー！そんなの知らん！お前ら二人で行って来い！」
アタシも顔がどんどん赤くなって来ている…
暑い！
アタシは扇風機の前まで走って行った。
突っ立って扇風機の風を浴びると、安心したような溜め息が出た。
美和ちゃんが一生懸命説明を始めた。
「…イヤっ、ホテルって言ってもそんなに高くないの！お金は十分足りる！」
カズくんは溜め息を漏らした。
「オレが言いたいのはそーゆーことじゃねぇって」
美和ちゃんに代わって直紀くんが言った。
「あ、ちゃんとしたホテルだよ？決してラブホなんかじゃないし…」
アタシは思わず耳を塞ぎたくなった。
恥ずかしいって！
「こら！そんな超低俗な言葉を弥生の前でサラっと言うな！」
カズくんは顔を真っ赤にして言った。
直紀くんは懲りずに言う。
「別にいいじゃん、そんなに照れなくっても！お前らだってもうカップルじゃん！一つの部屋に寝たって構わねぇって…」
カズくんはまた一つ溜め息をついた。
「…だってさ、弥生、どうする？」
突然のことにアタシは焦った。
…ってゆーか、アタシに聞かないでよっ！

< 61 / 202 >
表紙・目次

この作品をシェア

pagetop