君と歩く未知
 次の日、アタシはいつもより早めに学校に来た。
昨日、竜平くんと一緒にいたところをカズくんに見られたなんて知らないアタシは、カズくんの下駄箱を見て頬を膨らませた。
「もう、カズくんってばまだ学校に来てないんだ。準備する気あるのかな?」
アタシはそう独り言を言って、自分のローファーを下駄箱の中に押し込んだ。
ちょっと怒ったように言ったけど、本当は温かい気持ちなんだ…
今日は早くカズくんに会いたい。
昨日の態度、謝りたいんだもん。
アタシは足早に美術室までの階段を駆け上がった。
そしていつものように手馴れた手つきで美術室の鍵を開けた。
すると、そこにはアタシが始めて見るものが置かれてあった。
 「え…何これ…?」
始めてみる絵だ。
顧問の先生が置いて行ったのかな…?
アタシが近寄って良く見てみると、絵を描いている女の人のデッサンだった。
すごく丁寧に描かれていて、女の人は幸せそうに微笑みながら絵を描いている。
アタシは、はっとした。
…これは、きっとカズくんの絵だ。
案の定、絵の右端に『KAZUYA』というサインが入っている。
…じゃあ、この女の人って…
アタシ、なのかな…?
下駄箱に靴がなかったところからして、きっと、カズくんは昨日の夜のうちにこの絵を運んだんだろう。

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