君と歩く未知
 アタシは他にも見たことのない絵を見つけて、一つずつゆっくり見た。
その絵たちにはやっぱり『KAZUYA』というサインが入っていた。
水彩絵の具で描かれた他の絵たちは温かみがあって、幸せな気分になる。
…駅のホームでたたずんでいる、アタシを描いた絵。
きっとこの絵の場面は、泊まりで夏祭りに行った時のことだろう、服もその日と全く同じだ。
カズくんたちが乗った電車を一人待ってたアタシ。
カズくんにはこんな風に映ったんだね。
…浜辺を制服を着て歩いているアタシを描いた絵。
これは、アタシがカズくんに一年前にアタシの家であった事件を告白した日だね。
あの日アタシたちは学校をサボって電車に乗って海に行ったよね。
初めて二人の心が一つに重なった日だった。
この海がなければ、あの合作も生まれなかったんだ。
 …そして、一番最後にひっそりと置かれている絵、さっきまでの絵より画面のサイズが少し大きめ、この絵はなんだろう?
この絵には詩が付けられている…?
ドアを開いている手が描かれていて、そのドアの向こうにはアタシがビックリしたような目でこっちを見つめていた。
アタシは、その絵の中のアタシのすぐ横に付けられている詩を読んだ。
小さめの字で、温かいタッチの詩はアタシの胸を熱くした。
  ――ドアを開くと、君が居た――
  ――君は少し困った顔をしていたね――
  ――あのドアから幸せがいっぱい溢れて…――
  ――君と出会えて…――
  ――僕は世界中の誰より幸せ――
  ――だから、今度は君を幸せに…――
  ――君のために…――
  ――幸せのドアを探してあげるよ――
  ――君と一緒に未来へのドアを開きたいんだ――
  ――ねぇ、いつも君のそばにいるよ――
  
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