君と歩く未知
 「弥生!大丈夫か!?」
そう言いながら飛び込んできたのはカズくんだった。
アタシは自分の目を疑った。
まさか…カズくんが来てくれるなんて…。
アタシは傍に来てくれたカズくん抱きついた。
「おい、大丈夫なのかよ?弥生…」
カズくんの言葉をさえぎってアタシは叫んだ。
「ごめんなさいっ!…カズくんを不安にさせちゃって…悲しい思いにさせちゃって…本当にごめんなさい…」
カズくんはビックリしたようだったけど、すぐにアタシを強く抱き締めた。
そして優しく背中を撫でながら言った。
「ううん。オレこそごめんな…オレってばさ、あんまり絵にしたい題材が見つかんなくってさ…でもな、弥生の絵は描きたいって思えるんだ。弥生のこと、絵に残して一生、どこにいても何をしてても連れて生きていたいんだよ」
アタシは首を振った。
「違うよ、カズくんはちっとも悪くない…アタシが、勘違いして…カズくんがアタシに隠しごとするわけないよね…」
カズくんは少し笑って言った。
「今回は二人ともお相子ってことにしよっか」
アタシはカズくんの胸から顔を上げてニッコリ笑って頷いた。
「ホントはさ、恥ずかしかったんだよ。弥生の絵を描いてるのがバレるのが」
カズくんは照れたように笑った。
「…でも、アタシ嬉しかったな…、カズくんにこんな絵を描いてもらえて。本当に嬉しくってたまらないよ」
アタシがそう言うと、カズくんはもっと照れて、アタシの頭をグシャグシャにかき混ぜた。
 それを見ていた美和ちゃんが叫んだ。
「いいなー!アタシも彼氏に絵とか描いて欲しー!」
直紀くんは意気込んで美和ちゃんに言った。
「よっしゃ!オレが描いてやる!まかせとけ!」
それを聞いた美和ちゃんはげんなりした顔でアタシに言ってきた。
「直紀に描いてもらうくらいなら、幼稚園児に描いてもらう方が絶対キレイ!」
アタシとカズくんはそれを聞いてケラケラ笑った。
「なんだとー!?」
直紀くんは美和ちゃんにヘッドロックをしかける。
「きゃー!やめてやめて!」
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