君と歩く未知
 その日、アタシとカズくんは一日中美術室にいた。
アタシとカズくんの間には温かい空気が流れている。
でも…お客さんが来ない。
入場料一人百円ってのがダメなのかな?
でも、こうでもしなきゃ絵の具代がまかなえない。
あの大きな合作に使う絵の具の費用で、ほとんど部費が残っていないんだ。
アタシたちは二人で大きな溜め息をついた。
アタシたちが描いた絵も、人に見てもらわなきゃ意味がないもんね…
 そんなことを思っている時にこの教室のドアが開いた。
「あっ!いらっしゃい」
アタシたちが急いで顔を上げ、声をかけると、そこには直紀くんと美和ちゃん、そして直紀くんの友達…?柄の悪いヤンキー風の男の子三人が一緒に入って来た。
「来たよ~頑張ってる?って、ちょっとお!何ここ!?超過疎ってるじゃん!」
そう騒ぎ出したのは美和ちゃんだった。
「美和ちゃーん♪来てくれたのー?ありがとー」
アタシは喜んで美和ちゃんに抱きついた。
「よし、本日初のお客さんだな。おい、一人百円出せ!」
カズくんも直紀くんや他の男の子たちに絡み始めた。
どうやら、柄の悪いヤンキー風の三人はカズくんの友達みたい、ちょっと安心。
 五人が来てくれたおかげで、美術室は騒がしくなり、その温かい空気に惹かれて美術室に入ってくれる人が増えた。
次第に人の数は増えていく…
さっきまでの過疎ぶりは嘘のよう。
お客さんに人気のある絵は、アタシのわけのわからない脳内の絵、カズくんのふんわりしたタッチのアタシを描いた絵だった。
でも、その中でもダントツ人気だったのが、アタシとカズくんの合作の海の絵とカズくんが描いた、詩の付いたアタシとの出会いの絵だった。
(ケータイで記念撮影をするお客さんまでいた…)

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