嘘つきなポーカー 1【完】
薫は転がってきたバスケットボールを手に取り、それを由佳に差し出す。
「え…。」
由佳は予想外の行動に、少し戸惑う。
今まで自分に手を貸してくれる人など1人も居なかったからだ。
「あっれー?紳士の薫くんは、幽霊女にも紳士なんだねぇ。」
由佳にバスケットボールを差し出す薫の姿を見たクラスのおふざけ野郎、桐島がそう言って薫を茶化す。
「ありが…」
由佳が礼を言い終わる前に、薫は持っていたバスケットボールを由佳が居る方向とは逆の方向にぽいっと投げた。
ボールはまた遠くへところころ転がっていく。
クラス中の人たちがくすくすと笑っているのが分かる。
桐島は腹を抱えて大爆笑している。
「助けてくれるって期待したの?」
薫は由佳の顔を見てそう言うと、鼻でふっと笑った。
なんだ、こいつも所詮皆と同じか――…。
特に何も期待していなかった由佳だったが、少し残念だった。
飛び抜けて成績がいい小野寺薫は、こういうところでもまともな考えを持っているんじゃないかと少し思った自分が居たのかもしれない。
由佳は小さくため息を吐いて、バスケットボールを取りに行った。