これが、あたしの彼氏です。【完】
「あ、あたし、食後のお薬飲まなきゃ」
「あ?ああ」
あたしは横になっていた上半身をガバっと起き上がらせて、先程の心臓の高鳴りを誤魔化すように早口でそう言った。
「………う、」
けれど目の前のお薬を目に入れた瞬間、どうしても少しためらってしまう。
「…お前、まさか薬が飲めないとか言うんじゃねぇだろうな」
「え、」
そんなあたしに気が付いた矢沢君がそう言って、あたしはそれに小さく「…えへ」と笑っておいた。
「……マジかよ。お前何歳だよ」
「……だ、だって、今回貰って来たのは錠剤じゃなくて粉薬だもん…」
「あ?」
「粉薬って苦いし」
「……でも飲まないと治るもんも治らねぇだろ」
「そ、そうだけど」
「じゃあ鼻つまんででも飲め」
「え、それって効果あるの!?」
「やった事ねぇから分からねぇ」
「……あ、そうだよね。矢沢君はそう言う事しないよね」
「良いからさっさと飲めよ。それとも口移しで飲ましてほしいのか」
「は、はい!?」
そんな事をサラリと言って退ける矢沢君にあたしは少し動揺しながらも、「一人で飲める!」と意気込んで、嫌で嫌で仕方がない粉薬の袋をビリっと開けた。