なんで私が芸能人ッ!?
「こんにちはー。」
そう、いつも通りに挨拶しつつスタジオに入る私は自分でも驚くほど無感情。
なんか……小さいころに戻ったみたいな。
けど、小さいときと違うのは演技ができること。
私は満面の笑顔で歩いているのだから。
感情が無くても笑顔が作れるんだなぁ…ってしみじみ思う。
「よーい、カーーッ。」
それから撮影の用意が終わったスタジオで、撮影を始める合図が出された。
なんだろう…せっかく宮崎さんとの絡みがあるのに、全然わくわくしない。
どころか、私は今未夢になれてるのだろうか。
感情が………入ってこない。
「ねえ、未夢なんでしょ!?…いじめの主犯。」
宮崎さん…もとい、恵梨が私に話しかけてくる。
……っていうか、ここで宮崎さんって言ってる時点で未夢になれてないじゃん。
心の中で自嘲的な笑いがこぼれた。
「あたしが主犯になれるわけないじゃん。
っていうかいじめとか言っちゃってるけど、全部自分がしてきたことでしょ?」
みせかけの感情しか入ってない言葉に、宮崎さんの表情が一瞬崩れかけた。
たぶん……この表情は恵梨じゃなくて宮崎さんのものだ。
ただ、辛うじて恵梨の心が勝ったんだろう。
「っ……!
そ、んなの…わかってるよ!!けど…。」
セリフが戻ってきた。
「けど何?あたしらにやったわけじゃないって?
まー確かにそうだけど、あたしらのこと下に見てたのは事実でしょ?」
それに比べて……私は口が勝手に動いてるだけ。
心は冷めてるのに、何度も練習した言葉が口から出てくる。
「下になんか見てない!!
友達だと思ってた……。」
「過去形なんだ。…そりゃ当たり前か。
別にそー思ってたのも勝手だけど、横山はいじめてたでしょ?
あたしらの制止も聞かないくらい。」
そう言うと押し黙る宮崎さん……恵梨。
「よく平気な面してつるんでられるよね。いくら横山ぐらいしかいなくても。
そんな横山さんに感化されちゃってあたしに文句言いに来たわけ。」
「へ…平気じゃないよ!!
でも……日菜は今私の大事な友達だからっ。
親友だから………離れたくないのぉ!!!」
涙ながらに恵梨が言った瞬間。
「恵梨っ……!!!
大丈夫!?」
ガラッと派手な音を立てて、横山日菜がやってきた。
「はいカーーーっ!!
良いよー、じゃあいったん休憩ね。」
……終わったなぁって感想しかでない撮影。
こんな私で一発OKが出たのは多分、あんまり感情をこめず淡々と言うセリフが多かったからだろう。
……宮崎さんは完全気づいてたけど。
とはいえ、次は感情も込めないといけないからばれるかもなぁ……。
まあ、なんでも良いや………。
私が投げやりになった時ーーー
「矢城さん。」
宮崎さんの鋭い…少し怒りを含んだ声に呼ばれた。