ポーカーフェイス

 シャワーのついでに湯船にも浸かった悠翔は、下着だけ穿いてその他素っ裸でバスルームを出た。

 まだ完全に拭ききれていないのか、その金髪からは水滴が滴り落ちている。

 
「あー、ケータイ、コートん中だわ」


 肩にかけた質の良いタオルでガシガシ頭を拭きながら、悠翔は廊下へ向かう。

 と、コートのポケットがが、何やら光っている様な気がした。


「ん~?」


 ポケットの中をまさぐると、そこには探していたものがあった。

 光っていたのは、ケータイだったようだ。

 液晶を操作すれば、『メールを受信しました』の文字。


「誰だ~?」


 さらに操作していくと、送信相手には『尋翔』と表示された。

 メールを開く。


『さっきの話だけど。
 お前がやりたくないなら、やらなければいい と俺は思う
 まぁ、自分でよく考えな。
    おやすみ。  尋翔』


「ッハ」


 悠翔は、鼻で笑った。


「ったく…。素直じゃない、弟だぜ」


 ケータイを操作し、メール新規作成のページを開く。


『るせ。んなこた、分かってるんだよ、バカ弟。
 子どもは寝る時間だぞ、はよ寝ろ。

 


           さんきゅ。 悠翔』


「……ん。送れたな。…寝るか」


 寝室へと向かった悠翔の顔は、どこか嬉しそうだった。


< 9 / 145 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop