先輩上司と秘密の部屋で
(お兄ちゃん、相変わらずモテてる……)
杏奈はいきなりこんな場面に出くわしても、さして動揺する様子を見せない。
普通身内が告白されるところになんて滅多に見れるものではないが、杏奈にとっては日常茶飯事の光景だった。
特に高校時代はそれが顕著だったと、杏奈はしみじみ思い返す。
家の前に押しかけるのは毎日違う女の人で、皆揃いも揃って美女ばかり。
隼人が言い寄られて適当にあしらう様子を、杏奈はよく二階の窓から見物していた。
就職してからも変わらないだろうなと予想立ててはいたが、……まさか本当にその通りだとは。
呆れ返っていた杏奈の耳に、女性特有の甘ったるい声が響いていた。
「ねぇお願い。誰とも付き合う気がないなら、私を選んでくれない?」
隼人の腰の辺りに手を回した女性社員の手が、やけに艶かしい動きをしている。
今にもキスしてしまいそうなほど、ふたりの距離は近かった。
杏奈は羞恥に悶え苦しみそうになりながらも、目を逸らすことが出来ない。
隼人は口元に微笑を浮かべたまま、彼女の腕にそっと自分の手を重ねていた。