先輩上司と秘密の部屋で

「むぐっ……く、苦し……」


ジタバタもがいて脱出を試みようとしても、隼人の力には敵いそうもない。

これが本当に酔っぱらいの力かと疑いたくなるほど、隼人は思いきり杏奈を抱き込んでいた。


「……あんな……」


耳元で切なげに呼ばれ、杏奈は一旦動きを止める。

こうしてお酒を飲まなければいけない程、何か嫌なことがあったのだろうか。

普段弱み一つ見せない隼人の意外な行動に、杏奈は困惑せずにはいられなかった。

広い背中に手を伸ばそうとしたところで、杏奈は自分の真横から感じる強烈な視線に気づく。

ソファーから半身を起こした隼人に、なぜか立ったまましがみつかれているこの状況。

嵐士は険しい目つきで、すぐ隣からその様子を見据えていた。


「あの……これは、お兄ちゃんが勝手に……」


自分はブラコンじゃないと言い訳しても、嵐士は眉ひとつ動かそうとしない。

兄妹の行き過ぎた絡みを見られるのが恥ずかしくて、杏奈は必死に首を横に振り続けていた。

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