先輩上司と秘密の部屋で
「あのねぇ……私じゃなくて、お兄ちゃんが……」
「口移しして?」
隼人の放った衝撃の一言に、杏奈は口を開けたまま硬直してしまう。
「口移しなら飲む」
ニヤリと口の端を持ち上げながら、隼人は杏奈の口の中に水を注ぎ込んでいた。
「ん……ぐっ!」
隼人はきっと、目の前にいるのが誰なのかもわからないくらい酔ってしまっているのだろう。
妹に要求することとしては、あまりにも悪ふざけがすぎている。
どこぞの女と勘違いしてるのだと、杏奈が隼人を罵ろうとした――その刹那。
「きゃっ……!」
隼人の拘束が一気に解かれるくらいの力強さで、杏奈の身体が引き剥がされていく。
一瞬だけ掴まれた二の腕がやけに熱くて、杏奈は驚きながら嵐士の顔をまじまじと見つめてしまった。
「……下がってろ」
一見冷たい言葉に聞こえたが、彼の行動を見て杏奈は瞬時に顔を赤らめる。
嵐士はまるで杏奈を守るように手をかざし、隼人の前に立ち塞がっていた。