ラブソングは舞台の上で

「ちょっとタカさん、本番始まってますって!」

客席に聞こえないよう小声で訴える。

しかしタカさんは構わず私の肩を押した。

私たちはそのまま楽屋まで戻ってきてしまった。

「いいからいいから。ちょっと後ろ向いてみ?」

「え?」

タカさんに背中を見せると、ドレスのスカートの部分をゴソゴソしている。

「めくれて中のウェディングドレスが見えてるよ」

王様にひざまづかせてドレスを直してもらうなんて恐れ多い感じがする。

「すみません、全然気付かなくて」

「それに、ここから糸が出てるの、ずっと気になってたんだ」

背中の辺りでチョキッとハサミを使う音が聞こえた。

それにしても、こんなことしてて、時間は大丈夫だろうか。

前説が終わってしまっているかもしれない。

「ありがとうございます」

「いえいえ。始まる前で良かったな」

「はい」

それから私たちはすぐに舞台袖に戻り、演技を始めた。

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