ラブソングは舞台の上で

「まあとりあえず、こっちにおいでよ」

言われるがまま、舞台の中央へ。

私と晴海に当たっているスポットライトが、一つに重ねられた。

オルゴールのような、静かで優しいBGMが流れ始める。

晴海がふと微笑み、片膝を着く。

一体何をやっているのかわからず呆然としていると、晴海は私の左手を両手で包み、私を見上げた。

何? なに? なんなのこれ?

「アンジェラ……いや、牧村明日香さん」

「はい」

条件反射で返事をしてしまう。

本番中なのに、本名で呼ぶの?

一体何を考えているのだろう。

「俺は出会った日に君の歌に惚れて、この舞台のヒロインをお願いした。引き受けてくれて、本当にありがとう。おかげで良い舞台にすることができました」

私個人宛のメッセージだが、語り口調は演劇仕様。

約50人の観客の前で、このようなプライベートな話を聞かせて何をしようというのか。

「ど、どういたしまして」

「そして俺たちは、役だけでなく、プライベートでも良きパートナーになることができた。付き合い始めてからはまだ短いけれど、俺は本当に幸せです」

会社の人たちもいるのに、あまつさえ元カレまでいるのに、堂々と交際を公言してしまった。

恥ずかしさで顔が熱くなる。

「こちらこそ……」

チラッと客席の方を見ると、詩帆さんの隣で翔平が微笑んでいる。

「だけど、俺はもうすぐ卒業して、この町を出る。社会人になるけど、今はまだ俺だけの力でどんな生活をしていけるのかわからないし、無責任に俺について来いなんて言う度胸もない」

「……はい」

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