ラブソングは舞台の上で
あれから二年。
晴海は宣言通り一年で社会人として一人前に……なったかどうかは知らないけれど、とりあえずもう一年で私を迎える準備とやらをしてくれた。
私は明日、晴海の住む東京へと越す。
この間はエボリューションのみんなに送別会をしてもらった。
あの舞台の直後妊娠が発覚し、出産のため先に劇団を引退していたともちゃんも、1歳になった子供を連れて来てくれた。
ハタチになってお酒を飲むようになった恵里佳ちゃんは、タカさんに潰されて、いつものように堤くんに介抱してもらっていた。
最後の最後。
高田さんに
「お前を失うのは痛い。とても残念だ」
と言ってもらえて、私は久しぶりに号泣してしまった。
二年前と比べると、演者が倍にまで増えた劇団エボリューション。
これからも彼らの舞台が素敵なものになることを、私は心から祈っている。
「ていうか、あいつ、遅くない?」
私がDVDのイジェクトボタンを押したから、詩帆さんがつまらなそうにぼやく。
あいつとは、今日詩帆さんと共に私の荷造りを手伝いに来てくれた卓弥さんのことだ。
詩帆さんは昨年の夏に卓弥さんと結婚して、現在妊娠5ヶ月。
木村詩帆から中尾(なかお)詩帆になった。
詩帆さんは籍を入れるときに、
「私の苗字にすればキムタクになれるよ」
とふざけて提案したらしいが、卓弥さんは
「あいつは俺の永遠のライバルだから嫌だ」
と真剣に言って断ったらしい。
噂をすれば、どうやら卓弥さんが詩帆さんのお使いから帰ってきたようだ。
「詩帆ちゃーん、お茶買ってきたよ。ノンカフェインのやつだよね。おやつにフルーツゼリー買ってきたけど今食べる? それとも後にする?」
詩帆さんの妊娠がわかってからというもの、あまりにも献身的で逆にキモい状態だ。
この節操無しカップルがどうして結婚に至ったかというと、晴海の公開プロポーズに二人が感化された……というわけではなく。
アラフォーになった卓弥さんが男としての自分に限界を感じたタイミングと、アラサーになった詩帆さんが女としての自分に限界を感じたタイミングが重なったから、らしい。
何はともあれ、今まで他の男女に注いできた愛情を全てお互いと赤ちゃんに注いでいるので、よしとしよう。