ラブソングは舞台の上で

「それにしても明日香ちゃん、髪伸びたなぁ」

卓弥さんの指摘に、ひとつにくくっていた髪を解放し、触ってみる。

「伸びましたね、だいぶ」

当時はショートカットだったけれど、今は胸までのロングヘア。

痛めるのを避けるため、今はパーマはかけていない。

「伸びたんじゃないの。伸ばしたのよ。ね? 明日香」

つい半年前までロングヘアだったのをバッサリショートカットにした詩帆さんは、何もかもお見通し、という感じでニヤリと笑った。



引っ越しの準備がおおかた終わり、二人が帰って、8年間住んだこの部屋での最後の夜。

箱だらけになった部屋でテレビを見ていると、インターホンが鳴った。

直後、ハウリングのような音が部屋中に響き始めた。

画面を見るが、なにやら見たことのないものが写っており、何が起きているのかまるでわからない。

まさか、引っ越し直前に故障だろうか。

私はドアを開けて応答することにする。

「来ちゃった」

「晴海!」

晴海はインターホンのカメラに押し付けていた手を放し、私の体に巻き付ける。

なるほど、インターホンは故障ではなく、晴海のいたずらだった。

「明日香ー、会いたかったー!」

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