キスまでの距離
内線電話がタイミング良く鳴った。

忘れかけていた朝の記憶が、ぶわっと戻ってきた。

「あ、電話出て。」
「は、はい。」

落ち着け、自分。

「は、はい、図書室谷川です。」

電話の向こう側で、ぷっと吹き出す声がした。

「谷川先生、リラックス。」

声の主は、金沢先生だった。へなへなと力が抜けた。明るい笑い声と要件に、何を緊張してたのか、よく分からなくなった。

「大丈夫、大野先生に電話だから。」
「あ、はい、代わりますね。」

大野先生に受話器を渡し、お茶を淹れるため、司書室に向かった。
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