甘く響く
すぐにしたくして
レイはゼルとともに屋敷に向かった

「すみません。車が出払っていて…少々急ぎますね」

ゼルはレイの手をとってさきを歩く
昨日、足を洗ってくれた手だ、と思い出したら顔が熱くなる
レイは頭を振って熱を冷ました


「車がこっちに向かっているはずです。大通りへ行きましょう」

後ろを振り向きながら
レイを気遣うようにさきを歩くゼルの背中を
なんとも言えぬ感情で見つめていた


大通りは思ったより人が多くて
車が通る方と逆の側にレイが自然に歩く
ように仕向けてくれる
人とぶつかりそうになるのをゼルの腕が何度も守ってくれた

握られたままの手が
レイの意識を集めていく


「ゼル様!」

急に止まった車から
ゼルを呼ぶ声がして

「うちの車です。乗りましょう」

レイとゼルは乗り込んだ
そしてそのまま屋敷に向かう


昨日と同じように玄関に横付けされた車から
屋敷には入らず
そのままリンリンの栽培場へ向かった

そしてレイは目を疑うことになる



「わぁッ…」

見事に咲いたリンリンは
太陽の光を十分に浴びようと
誇らしげに立っていた


「レイさん、やっぱりあの夢は事実だったのです。」

いつの間にか横にいたアルが
レイを見つめていた

「アル様…でも…私…」

何もしていませんよ
そう言いかけた言葉を飲んだ

アルが
今にも泣き出しそうだったから

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