甘く響く
夕方
ジーンが屋敷に到着してすぐに
ヴァイオレット家の晩餐がはじまった


「あれ?レイ…だっけ?」

レイとジーンの待つ晩餐室に最初に入ってきたのはクライブだった

レイは立ち上がって頭を下げる

「聞いたよ。咲いたんだって?すごいねぇ」

クライブはレイの頭を大きな手で撫でた
そして顔を寄せて
周りに聞こえない大きさの声で言う

「今日もすごく綺麗だ。よかったらあとで俺の部屋へおいで?花のお礼、してあげる」

心臓が跳ねた
脈拍が上がって顔がどんどん熱くなるのが自分でわかる

「クライブ様、レイさんが困っていますよ」

ゼルの一声
でもクライブは動じない

「お礼、って何されるか想像したんでしょ?耳まで赤いよ。…かわいいなぁ」

そう言ってまた頭を撫でるクライブは
楽しそうに笑いながら席についた



次に入ってきたのはレオンだった
至極不機嫌そうな顔をしていて
髪が一房跳ねている

「メシいらねーつったのに…寝てんの邪魔されんの嫌なんだけど。…あれ?」


レイを見つけたレオンも
クライブと同じように顔を寄せた

「何?今度こそ泣かされに来たの?俺の部屋防音だから後でこいよ。お前どんな声でナクんだろね」

不機嫌そうな顔はもうなくて
レオンはにやりと笑う
レオンの言ったナク、の意味が
泣く、なのか、鳴く、なのか
少し考えてしまったらまた顔に熱が上がる

それを見てまた色気のあるあの笑みを浮かべた

「レオン様、レイさんが困っていますよ」

ここでもゼルの一声
でもやっぱりレオンは動じない

「ナク、は、どっちだろうな?どっちでも大歓迎だけど」

考えていたことが見透かされて
どんどん顔が熱くなる

レオンは満足したのか手をヒラヒラと振って席についた



最後に入ってきたのはリーゼ

大きめのニットから指先だけ出てるのを見ると
子犬のぬいぐるみのようだった

「あれー?レイちゃんだー!」

早足で駆け寄ってきたと思ったら
レイの首に両手を回した

ニコニコしたまま顔を近づける

「あとで俺の部屋きてよ。この間は邪魔入っちゃったけど…今日は続き、しよ?」

大きな瞳がすぐ近くにあって
例の心臓は動きを早めていく

「まったくあなたたち兄弟は!レイさんは大切なお客様です!やめてください」

ゼルの声に
リーゼは不機嫌そうに舌をだした

「まーた邪魔入ったー。ねぇレイちゃん」

ゼルを見ていたリーゼはまた顔をぐっとこちらにむける

「口元についたクリームはちゃーんと舐め取らなきゃダメだよ」

リーゼの満面の笑みが
なおさらレイの心臓を煽る

でもすぐに飽きたのか
自分の席へ行ってしまった


「ゼルすぐ邪魔すんだもんなー」

リーゼの不機嫌そうな声

「ゼル実はヤキモチ焼いてるんじゃないの?」

優しく笑うクライブの声

「男のヤキモチは見苦しいぞー」

興味なさそうなレオンの声


そんなやりとりを尻目に
ジーンがレイに耳を寄せた

「あなたどの人が好み?」

「は?」

ジーンの言葉にレイは呆れた声を出す
今度は口を寄せて周りに聞こえない声量で続ける

「だって年頃であんなにいい男が三人も!あなたはどれ狙いなの?」

「…そんなんじゃないし。って言うか私庶民、彼ら貴族、ワカリマスカ?」

「それはあなた、玉の輿なんて言葉も世の中にはあるのよ?お母さんはねー、あの子が好みかなー」

そう言いながら指差した先に
ゼルがいた

「気が利くし優しいし。でもお母さんやっぱりアルさんがいいー」

ジーンが盛り上がる中
レイは小さくため息をついた
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