甘く響く
「我がヴァイオレット家はリンリンでなし上がった財閥なのです」
レイは小さく息を飲んだ
この街には産まれてからずっといるが
ヴァイオレット家がリンリンで財閥になったとゆう話は初めて聞いた
レイはそのまま黙って
男性の話の続きを待った
「私も聞いた話なので詳しくはわかりませんが、今の当主様のお兄様がリンリンの栽培に貢献したと聞いています。
そのお兄様には体が弱く、病気がちの大切な方がおり…その…」
男性は言葉を詰まらせ、視線を手元へ泳がせた
小さく深呼吸をしてまた、レイを見る
「余命宣告された時にプロボーズをしようと決めたようです」
まるでおとぎ話のようだった
男性の真面目な語り口を聞いているとそんなおとぎ話も全て本当に聞こえる
余命宣告された大切な人に
どうしてもプロポーズしたいがために
品種改良をして作られたリンリン
それで財を成したヴァイオレット家
リンリンにはそんな事情があったなんて知らなかった
「それで?レイにはなんのご用で?」
いつの間にか接客を終わりそばまで来ていたジーンが言うと
男性はまた視線を落とす
「…リンリンが咲かないのです」
男性は静かに
そしてゆっくり言った
「もうずっとリンリンが、蕾はつけても咲かなくなってしまったのです」
レイとジーンは
それを聞いて押し黙った
男性は視線を落としたまま話を続ける
「色々な草花の研究者にも相談しました。ですが全て原因不明、で、片付けられてしまって。…ですが」