あなたがいなければ。【短編小説】

★バージョン慧里奈★

「そんな事あったんだ。ってか、お父様とお兄様のせいじゃん。」
「…。違う!俺のせいじゃない!お父様がいけないんだ!」
「何を言っているんだ!勝手に解釈したのはお前だろ!」
「そういう目をしてたからです!しかもちゃんと使いの者に命令してたじゃありませんか!?」
「…俺じゃない!!」
「じゃあ誰何ですか!」










シーン









ブチッ

「――く。」
「?」
「早くして下さい。早く言わないと2人とも、命無いからね?」

「「…」」



強情な…。



「早く―――」

「私よ。」
「へっ?」
「「「…」」」















「…お母様!なぜここに?」
「今海外から帰ったところよ。」


そう。
この人は私のお母さん。
神崎 深那子(ミナコ)。

「なぜお母様が?」
母「…」
「お母様?」
母「止めて。」
「何をですか?」
母「様付け。」
「あっ。」
母「前から言ってるはずよ。」
「はい。」
母「で?」
「なぜお母さんが?」


「晃君はとても頭が良いと慧里奈から聞いていたからよ。」
「私!?」
母「えぇ。」
父兄「「え゛り゛な゛ぁーーー!」」
「知りませんってば!」
母「え?私は慧里奈から聞いたのよ?」
「お母さんまで!」

凄く楽しい。


晃「慧里奈が…」
兄「笑った…」


ん?

「なに?」
兄「いや。慧里奈が作り笑いじゃない笑顔だったから。」
晃「うん。」
「そんなに変だったかな?」


確かに心から笑ったのは約10年ぶりかな?
あの、お兄様からやられた時以来?

そう言えば…


「じゃあなんでお兄様はなぜ私のことを?」
父「それは智彦が―――」
兄「お父様。」
父「…。」
「?」
兄「それは、本気だったから。本気で慧里奈の事が好きだったから。」
「…」


みんなが静かになる。

兄「あの時は、まだ小さかった慧里奈に近付けばすぐに好きになってくれると思ったんだ。中学の時の女がみんなそうだったから。」
「…」
兄「でも慧里奈は違ったな。俺が慧里奈を好きになったときは、もうすでに手遅れだったんだから。」
「え?」
兄「気付いてなかったのか?」
「何に?」
兄「お前は、家に帰ってくる度にキラキラ輝いてた。わかるか?」


私は晃君をチラッと見る。

兄「わかってるじゃん。」
「なにが!?」




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