ぽんぽんぼん



でも、顔はへらっと笑ったまま。



そうしておかないと、いつ涙が溢れるか分からないから。


最近の私は、涙腺が緩い。



私達の間に本の一瞬、沈黙が訪れる。


それを合図に梶木君が窓へと目を向けた。


今日も変わる事なく、窓の外には緑が生い茂ったお墓のある山が見える。


太陽に照らされて頂上の辺りは光輝いている様に見えるのが、何だか幻想的だ。



「森山さん」



梶木君の声が沈黙を破る。


彼の目は窓の外に向いたまま。



「森山さん。…あのさ。……お盆にばあちゃんのお墓参りに行ってきたよ」



あ……、ああ…。


梶木君は、……ちゃんと一歩を踏み出せたんだ。



そう思った瞬間、ツーンと鼻の奥が痛くなると共にぶわっと目に溜まる涙。



「う、……うん。……良かっ…た……」



唇を噛み締めてから口を開いたが、声を出すと同時に頬を涙が伝っていく。



「ばあちゃんの遺影も、仏壇の横にじいちゃんの遺影と一緒にちゃんと飾った」


「う、…うん」



良かった…。


本当にその言葉しか出てこない。


梶木君が、梶木君の家族が一歩を踏み出せた事が嬉しくて。


私のしたことが切っ掛けになった事が嬉しくて。


私があの時、梶木君に言って良かったって思う。


言う事が梶木君の為になる!なんて、断言出来なかったし、嫌われたくなかったから、凄く迷ったあの決断を。


……今ほど、間違ってなかったって思える事はないよ。


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