ぽんぽんぼん
「何で森山さんが泣いてんのさ」
ほんと、何で私が泣いてるんだろ……。
目の前にいる梶木君は、その渦中の人なのに泣いてなんかいない。
「う、…うん。…ご、…ごめん」
私は、梶木君や梶木君の家族の苦しい気持ちを体験してないのに。
やっぱり涙が止まらない。
その時、梶木君の左手が伸びてきたと思ったら、涙と鼻水でぐちゃぐちゃの私の頬にそっとその手が触れる。
梶木君の手の温もりが伝わってくる。
と、同時に加速する鼓動。
「ほんと森山さんって」
「…………」
そんな所で梶木君が言葉を切るから、その言葉の続きを聞くのが少し怖い。
ギュッと唇を噛み締める。
と、共に梶木君の唇がゆっくりと動きを見せる。
「ムカつくよね」
やっぱり、嬉しい言葉が続く筈がなかった。
「だよね」
そう言いながら苦笑いを漏らすのが、私の精一杯だ。
「森山さんのせいで、嘘が壊れちゃったし」
うん。……分かってる。
「森山さんのせいで、立ち止まっていられなくなった」
うん。……私のせい。
「森山さんなんて嫌い…」
うん。……やっぱり、……そうだよね。
梶木君からの嫌いが胸に突き刺さって痛い。
梶木君を見ているのすら辛くて俯こうとした時、頬に添えられていた梶木君の手がスルリと私の顎を持ち上げた。
逃がさないって言われている様な目。