ぽんぽんぼん
「で、ででででも、梶木君、次の日めちゃくちゃいつも通りだったし」
そう。梶木君は私とキスをしたなんて事忘れてしまったんじゃないかって程、いつも通りだった。
だから、無かった事にしようって思ったんだ。
「あれは、森山さんがビックリする程いつも通りに匂いを嗅ぎに来たからでしょ。自分だけ意識するなんて格好悪いからね」
梶木君のその言葉でキスをした次の日の記憶が頭に過る。
「あっ、…そっか」
梶木君の言う通りだ。
梶木君が教室に入って来た瞬間に、それに気付いた私がいつもと同じ様に、梶木君の匂いを嗅ぎに抱き着きに行ったんだ。
匂いを嗅いだ後の梶木君がいつも通りに私と接するから、梶木君が私とキスをした事を気にしていないんだと思い込んでた。
でも、よく考えたら先にいつも通りに接したのは、……私の方だ。
「森山さんって、ほんと馬鹿だよね」
「十分承知しております」
もう十分過ぎる位分かってる。
ガクッと肩を落とした時、梶木君の目が私を射る。
いつもなら蔑む様な目を向けられるのに、私の目の前でフッと鼻で笑う梶木君の目が、いつもより優しい気がする。
迷子の私に話し掛けてくれた、梶木君のおばあちゃんみたいな優しい目。
梶木君と梶木君のおばあちゃんは、……似ている。