ぽんぽんぼん



それを梶木君の手がそっと掬う。



「知ってる。まあ、森山さんなんかに否定する権利なんてないけどね」



梶木君の手の上に乗った一粒の涙が太陽の光で輝いていて。


その輝きが、今、この時を忘れない様にしてくれているような。そんな感じ。



「そんな権利、一生……要らないよ」


「ふーん」



相槌はいつもの様にどうでもよさそうにする癖に、顔は凄く優しく微笑んでいる彼。


そして、私の涙が止まるまでそうやってずっと私を見ていてくれる目の前の彼は。



私の大好きな人で。


私の彼氏の梶木颯太君だ。










やっと涙が止まった時には、もう下校時間になっていた。


夏が終わったからか、気温は高いのに日が沈むのは早くなったらしい。


夕日に照らされている教室はオレンジ色だ。


ガタッと音をさせて椅子から立ち上がった梶木君が私へと顔を向けて、


「森山さん、送ってくよ」


そう言って私の机の横に掛けてあった鞄を取る。



送ってく。なんて言葉を梶木君から聞けると思ってなかった。


可愛い女の子なら、ここで遠慮でもするのかもしれない。


でも、


「いや、でも、…お願いします!」


頑張ってみたけど、結局はそう言って頭を下げた。


顔を上げてニカッと歯を見せて笑うと、苦笑いを漏らされる始末。



「いや、でも、の後は悪いし…じゃないの?」



普通はそう続くんだと思う。


でも、でも、私にはやっぱりそんな可愛いらしい事言えない!


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