ぽんぽんぼん
「だって、梶木君と帰れるんだよ!送って貰えるんだよ!甘い匂いだって嗅ぎ放題なんだよ!断るなんて出来ません!」
「出た。匂い」
意気込む私とは対照的に冷めた目を向けてくる梶木君。
ああっ!折角の優しい梶木君が……。
「いや、匂いだけじゃなくて、梶木君が好きなのは本当ですよ」
取り繕う様にそう口にしてみたけれど、梶木君は、既に私に背を向けて教室のドアの方へと歩き出してしまっている。
慌てて、その背を追い掛ける。
もう少しで梶木君に手が届くと思ったその瞬間、梶木君が足を止めて振り返った。
「森山さん、知ってた?」
その唐突な質問に首を傾げ、その場に足を止める。
「何を?」
私のその言葉を待っていたかの様にニヤッと意地悪に笑ってから口を開く梶木君。
「森山さんは、いつも僕からぽん菓子の甘い匂いがするって言うけど」
梶木君からは、いつもぽん菓子の甘い匂いがしている。
それは、嘘なんかじゃない。
勿論、梶木君のおばあちゃんも同じ匂い。
凄く落ち着く、大好きな匂い。
「僕からしたら、森山さんの方がぽん菓子の甘い匂いをいつもさせてるって」
その言葉で思考が一瞬止まった。
私が動けなくなっているのを分かっているのか、梶木君が私の手を掴む。
「知らなかったでしょ?」
そう呟いて私の手を引いて歩きだした彼に、私の心は持っていかれっぱなしだ。