あなたが作るおいしいごはん【完】
しかし
後ずさっているうちに
足が縺れた私は
「……あっ!!」
………ドンッ。
その場に尻餅をついてしまった。
「…痛っ。」
お尻への衝撃に顔を一瞬顰めた私に
『…萌絵ちゃん。
追いかけっこはおしまいだね。』
薮嶋恭平は私を見下ろすように立つと
『…俺と一緒に来てくれる?
オフクロがまた君に会いたがってる。
“萌絵ちゃん連れて来て…。”って
俺に泣くんだよ……。』
そう言って
少しだけ膝を屈ませたと同時に
膝を手に置きながら私をジッと見た。
『…だけど、君は
俺を避け続けるから
あのビルでは会えないし
誰も君の所在地を教えてくれない。
君を連れて来ないとオフクロは泣くし
ばあちゃんはオフクロから
八つ当たりを受けて可哀想だし…。
…だから俺は…君を探す為に
オフクロに会わせる為に
頻繁にこの家の周辺を通っては
君が帰って来てないかどうかを
遠くから眺めては
確かめてたんだよ…。
…そしたら、赤い女性用の
自転車が停まっているから
多分間違いないだろうって思った。
…頻繁に見に来た甲斐があったよ。』
その言葉に肩がビクッと身震いした。