あなたが作るおいしいごはん【完】

私の所為で

この男のおばあさんには

気の毒な事をさせているとわかってる。


私が会いに行ってしまった事で

多くの人に迷惑をかけている。


田宮さんからこの事で

彼…カズさんに

もう話が言ってるだろうか…。

彼は怒っているだろうか。


でも、だからと言って

この男が田宮さんや学校に

私の住んでいる所を聞いたり

この実家を頻繁に見に来ていたなんて


……やっぱり気持ち悪い。


この男がしているのは

何だかまるで………。


「…薮嶋さん、ごめんなさい。」


私は尻餅をついたまま

お尻と手で後ずさりを試みた。

しかし

『…まだ…俺から逃げるつもり?
俺は別におかしな事は
言ってないじゃないか!!
オフクロに会ってやって欲しいと
頼んでるだけじゃないか…。

萌絵ちゃん…オフクロの所へ
一緒に行こうよ…。
オフクロが《クッキー》を焼いて
首を長くして待ってるから…。

…さあっ…ほらっ…。』


そう言って薮嶋恭平は

尻餅をつきながらも

後ずさりする私に

再びじわりと近づきながら

そっとしゃがみ込んで立膝をつくと

『…ほら。』

と、私の前に手を差し出した。


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